悠久に……



「沙耶……」
僕の目には、沙耶が映る。
あの日、別れたままの姿の沙耶が。
「郁紀、沙耶の身体……変じゃない?」
自分の能力については自信を持っているだろうに。
それでも僕の目にどう見えるか、不安なのだろう。
「大丈夫だよ。沙耶は綺麗だ」
やっぱりそういう事を気にするあたりは、女の子だな。
「ははっ……」
沙耶の顔を見ていると、自然と笑みが零れた。
どれくらいぶりだろう、声に出して笑うのは。
「笑うなんてひどいよ」
むくれてみせる姿までが愛らしい。
僕はそんな愛しい沙耶の顎を持ち上げると、唇に短く、触れるようなキスを
した。

「んっ」
「沙耶……」
小柄な沙耶の身体を抱え上げる様にして、腰の上に乗せる。
幾年ぶりかに抱きすくめた腰骨は、驚くほどに細かった。
記憶の中の身体は、これほどまでに軽かっただろうか?
屹立したものを彼女の股間に擦りつけると、ニュルニュルと粘液が絡みつく
感触。
「あっ、や……っ」
「沙耶、濡れてる……」
「あっ、だって……。郁紀、焦らさないでよぉ……」
これなら、前戯の必要はないだろう。
「いくよ、沙耶」
「うん、来て……」
沙耶の腰を浮かせ、狙いを定める。
やがて、ぬめりを帯びた性器の中心に窪みを見つけると、腰をぐいと前方に
押しだした。
「ぅ……ふうぅぅ……!」
ずぷり……と音を立てて僕のものが沙耶の中に飲まれていく。
「あ、はぁぁ。郁紀の、入ってる」
おとがいを反らし、沙耶が歓声を上げる。
やがて根元までが完全に埋まると、沙耶がゆっくりと上下運動を始めた。
「いい、よぉ、郁紀ぃ……」
ゆっくりだった腰のスピードは、どんどんと速度を増していく。
貪欲に僕を貪ろうと、腰を遮二無二揺すりたてる沙耶。
僕も、淫蕩で美しい彼女を抱きすくめながら、腰を突き上げる。
ギシギシとベッドのスプリングが軋み、二人の身体を汗が伝った。
「奥に当たって……こすれるよぉ!」
沙耶の声に、僕は彼女を抱きしめる腕に、一層の力を込める。
沙耶の細い背骨が折れてしまわんばかりに。
「郁紀……ふみのりぃっ!」
「沙耶、沙耶!」
互いの名を呼びながら、僕らは抱きしめあい、唇を重ねる。
「んむ、ふちゅぅ……」
「んっ、んっ、ん……」
二度と離すものか。
愛しい沙耶。
二度と。
「あっ、あっ、あぁっ! すごいよぉ、コツコツって奥、突かれて……ぇ!」
喘ぎ声が、段々と高さを増していく。
「イク、もうイッちゃうっ! ふ、ふみのりぃっ!」
絶頂に向け、僕と沙耶の息遣いが荒く、早くなっていく。
そして――。
「かけて……。沙耶の身体に熱いの……かけてぇっ!!」
沙耶が腰を浮かし、限界まで高まったペニスが引き抜かれる。
「うっ! くうっ」
僕は沙耶の声に応じ、彼女の白い肌の上に重ね塗りするようにして、白濁を
解き放った。
「あっ、あああぁぁぁぁぁ……」
精を全身に浴びながら絶頂を迎えた沙耶の身体が、倒れ込むようにして僕の
胸にもたれかかってくる。
その温もりを、汗ばんだ肌の感触を、沙耶の息遣いを。
腕の中の沙耶を感じながら、僕は瞳を閉じた。



* * * * * * * * * * * * * * * * * *



「あったかいよ……」
びちゃびちゃと身体中に降りかけられた精子を指ですくうと、沙耶はまるで
自らに染み込ませるかのように、それを引き伸ばして塗りこめていく。
「膣内に出さなかったけど、良かったのかい」
感じた違和感を、沙耶に問う。
以前、沙耶は頑なに膣内で、口内で果てることを要求してきた。
なのに、今日は自ら膣外射精をねだった。
「……ん。あれは、生物の本能っていうか、繁殖のための資料というか、そう
いうのだから」
……よく分からないが、そういう事らしい。
「でも、今は郁紀と一緒にいたい。ずっとずうっと一緒にいたいから。それが
今、沙耶にとって、一番大事な事なの」
「沙耶……」
真っ直ぐに、沙耶の瞳が僕を見つめる。
僕は、その視線を正面から受け止めた。
「郁紀は、膣内で出す方が好き?」
不意に目を逸らし、不安げな表情で問いかける沙耶。
その表情が愛おしくて、僕はまた笑ってしまった。
「もう、なんで笑うのよ」
「ごめんごめん。……僕は沙耶が望むのなら、それでいいよ」
「もう……」



「でも、本当に……良かったの?」
今度の「良かったの?」は先ほどとは別の事柄について、だ。
「心配性だな、沙耶は」
沙耶の髪を梳いてやりながら、はっきりと僕は告げる。
「僕の居場所は、ここだけだ。沙耶が側にいてくれれば、それでいい」
「郁紀……」
「それに、白い壁はもう見飽きたしね」
冗談めかして、そう言ってみる。

そう、白い壁を見つめては、沙耶の訪れを待ちわびた日々。
来る日も来る日も、沙耶の声を、姿を、空に思い描き、夢想した。
だが、もうその必要はない。
僕の目の前には、沙耶がいる。
本物の、温もりを持った、沙耶自身が。

「行こうか」
何処へ、とはあえて言わなかった。
彼女なら、言わずとも理解してくれるはずだ。
「……うん」
案の定、短くつぶやいて頷いてくれた彼女の二つの瞳には、溢れんばかりの
涙が溜まっていた。
その瞳を拭ってやりながら、僕は彼女の手を取る。



開け放たれた格子から出た僕の目に映るのは、腐肉と腐臭で埋め尽くされ、
汚穢に満ちた情景。
あの、忌まわしくも愛しき世界。
沙耶と、二人だけの世界だ。

握った手を確認する。
温もりを感じる。
沙耶を感じる。
「愛してるよ、郁紀」
沙耶が笑った。



そして、僕らはこの爛れた腐肉と腐臭の世界を共に歩きはじめた――。



(完)


空蝉さんから場面の説明も兼ねてコメントをいただいてます。

今回のSSは病院END後の話です。
END後で書くとなると、これしか沙耶再登場の可能性はないですし。
沙耶が出ないのはヤだし(笑)
待ち続ける郁紀の所に再度沙耶が現われた。
そして郁紀は、沙耶にある願いを……って感じです。


旧ECSの5000ヒットのお祝いSSとして空蝉さんより頂いていたものです。
ECSの復活とともに再UPさせてもらっちゃいました。
今ではプロとして大活躍されている空蝉さん、改めて本当にありがとうございました。

さてさてニトロプラス「沙耶の唄」。
低価格のソフトで3、4時間?5?と短いながらも圧倒的な何かをもった作品です。
ぜひ一度やってみてくださいね、でもかなり人を選びますので興味ある方は、やってみてくださいね(笑


空蝉さんのサイトはこちらです

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